20ワットまでのLDに

 DC-DC コンバーターは定電圧出力だが、内部構造は極めて容易に定電流出力に改変できる。それだけに、メーカー自らが定電流出力の DC-DC コンバーターを販売してくれればすべてカタが付く。しかし、一般市場には需要がないんだろうな・・・
 よろしい、ならば改造だ!

 コンバーター内部には独自のフィードバック回路が存在する。定電流出力に改造しても、既存の内蔵フィードバックループの定数との関係からか発振してうまく行かないことが多い。幾つかの機種を試した結果、定電流を実現するためのフィードバックループはPICによりソフト的に行うのが楽との結論に達した。ワット数が大きくなるとPIC分の消費電力は無視できる一方、調整が容易で融通も効く。ただし、高速変調には不適。レーザー加工機ではなくレーザー銃として遊ぶような用途を想定している。

 PICによるフィードバックを行うには、2つの条件が必要
1)現在の電流値をPICに取得できる
2)コンバーターの出力電圧をPICから変更できる

 これさえ出来れば後は自明。オシロと二人三脚でソフトを改良するだけの、簡単な仕事です。
 特に1)は幾らでも方法がある。シャント抵抗と電位差取得という原始的手法が、製作も容易。

 

DC-DC コンバーターの選定

 LDの順方向電圧と、定格電流を確認する。順方向電圧は電流によって変化するが、赤外線LDでは1.6V〜1.8Vの間に入るのが一般的。
・入力電圧の範囲が使用したいバッテリーの電圧に適合する。
・出力電圧の調整が可能。
・LD順方向電圧の最低値よりも低い電圧を出力可能。
・LD順方向電圧の最高値よりも0.5V程度以上高い電圧を出力可能。
・定格電流以上の電流を供給可能。

 以上を満たすコンバーターが必要であり、選択肢はそう多くない。ここではテキサス・インスツルメントの PTH08T210W を使用してみる。姉妹機種もあるので、スペックが合わない場合はサイト内を漁ってみよう。

・入力電圧が 5.5〜14V でありラジコンバッテリーに適合。
・出力電圧を 0.7〜3.6V まで調整可能でありLDに適合。
・電流30Aまで可能であり光出力20ワット程度までのLDをこれ1個で駆動可能。

 万能スペックだが、非絶縁型なので直列運転は出来ない。並列運転も、そのままではできない。ゴキブリレーザーver.2では、1つのPICで2つのコンバーターを制御下に置き、並列運転で55AのLDを駆動しています。

 

改造ポイント

 100KΩの金属被服抵抗をハンダ付け。2つのチップ抵抗の間隔がいい感じに離れているため、細かな作業の割にはハンダ付け不良になり難い。それでも、ここはシステム全体の信頼性に関わるので慎重にしっかりハンダを乗せる。ハンダが剥離すると致命的。

 PTH08T210W の内蔵フィードバックループは、ハンダ付け点の電位を0.7Vにキープするように動作する。

 ハンダ付け点や基板を保護するため、エポキシで塗り固めたところ。
 表側には、積層セラミックコンデンサーを盛ってある。

 ハンダ付けは赤い↓の部分に相当する。
 R1とR2はコンバーター基板に最初から搭載されている。ハンダ付けしたのがR4で、別途12番ピンにR3を外付けする。
 LTC2630Aは0〜4.095Vを出力できるので、R4とR3の抵抗値を適切に選択することでコンバーター出力を任意の範囲に設定可能。回路図の通りだと、約1.3〜2.5Vの出力範囲となりLD駆動に適する。この範囲内でPICからのデジタル値出力に応じ、出力電圧を約0.3ミリボルト単位で自由に変えられる。

 PICには A/D コンバーターが内蔵されているが、精度が悪いしノイズにも弱い。シャント電位差はロスとなるので少しでも小さくしたいが、そうすると S/N 比は低下する。専用の A/D 変換用IC を使うのが望ましい。
 D/A 出力用の LTC2630A もそうだが、PICとは配線3本によるシリアル通信となる。すなわち、PICとの距離が離れていてもノイズの影響を受けにくい。

 

D/A と A/D

 そればかりではない。定電圧駆動で一番問題なのが、電源投入直後に大電流が流れる現象である。どんなに強力なヒートシンクを装着しても、LDの温度は電源を入れた直後が一番低いことに変わりなく、低温=内部抵抗小ということで最も大電流が流れる。その瞬間に絶対定格を超えないよう調整すると、定格よりもかなり低い状態でLDを駆動するしかなくなる。
 LDは電源投入直後に流れる電流を少なくしておき、発熱してLDの温度が上がるとともに少しずつ電流を増やす駆動方法が推奨されている。発熱の桁違いなワット級LDでは、手抜きが出来ない。
 シロウトに毛が生えたような個人でも手軽にそういう制御を行うにはどうすれば良いだろうか?

 D/A コンバーター LTP2630A を、ピッチ変換基板にハンダ付けしたところ。

 4.096Vの基準電圧。

 ピッチ変換基板の中央手前に見えている小さいのが、A/D コンバーターの LTC1865A である。
 最初に足をまとめてブリッジ構わずハンダ付けし、ハンダ吸い取り線で仕上げる。

 2.5ミリオームのシャント抵抗R5と合体。
 最大30Aでのシャント電位差(ロス)は0.075Vに抑えられる。

 動作試験全景。
 DC-DC コンバーターは円形ヒートシンクの下に実装されており、ゼロプレッシャーソケットで抜き差しの楽なPICでソフトの検証を行う。A/D コンバーターはR4に近接実装し、D/A コンバーターはR5に近接実装。こうしてノイズを抑え、PICとの距離が10センチ以上あっても安定して動作する。

 

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