回生型回路

 回生型は、サージを発生させることなくコイル電流を停止させるために開発した回路である。未使用に終わったエネルギーを回収することで省エネとなり実質的な効率もアップするが、目的はあくまでサージ対策である。
 ラジコン搭載を考えた場合、電力→運動エネルギー変換効率よりも、「周囲に影響を及ぼさないこと」 の方が遙かに重要である。

 

回路の現実

 原理的には綺麗に動作しても、現実の素子は理想的な動作をしない。回生型回路のアキレス腱は整流用ダイオードの順回復時間である。これがゼロではないため、コイルサージが発生してしまうのだ。
 そこで、IGBTのスイッチングをスローに行うことでサージを緩和する。

 初期状態でIGBT1とIGBT2が共にOFFの時、R1によってIGBT1のソース電位はGNDにプルダウンされている。これは、IGBT1のゲートを駆動する回路の電源となるコンデンサーに充電するためである。

発射指令が下ると、IGBT2を先行してONにする。
 1KΩの抵抗を介してPICの出力ピンに直結されたゲートが、ゆっくりと充填される。
 50μ秒程度でほぼ完全にONとなる。

 

 100μ秒遅延させて、IGBT1をONにする。
 こちらのゲートは光ゲートドライバーを介しているため反応が10μ秒程度遅延するが、すみやかにONとなりコンデンサーの電荷がメインコイルに急速に流れ込む。

 所定の時間だけそのまま待つ。
 1/35ストームタイガーでは1ミリ秒以下である。

 いよいよIGBTをOFFにする。最も危険な瞬間だ。
 まず、IGBT1だけをゆっくりとOFFにする。10μ秒程度の遅延で電流は切断される。その瞬間、GND部分にサージが発生する。しかし導通しているIGBT2に負荷は掛からない。
 だが、D2が導通する前にIGBT1が完全にOFFになってしまうとサーキットが作れず、コイル電流が行き場を失ってIGBT1を破壊してしまう。IGBT1はゆっくりとOFFにせねばならない。
 順回復時間が経過し確実にD2が導通するまで、20μ秒待つ。D2が導通すればフライホイールが完成し、サージは収まる。

 

 続いてIGBT2をOFFにする。これも危険。

 PICの出力ピンを0にすると、PICに電荷が吸い出される。ゲートには2KΩの抵抗を介して接続されているためゆっくりと引き抜かれ、IGBT2のON抵抗もゆっくりと上昇する。これによりサージを抑制しつつD1の順回復時間を耐える。
 D1が導通すれば既にD2は先行して導通済みであり、一気に回生回路が完成する。サージは収まり、コイル電流はC1に回収される。

 サージが安全領域に収まるほどゆっくりとIGBTのON抵抗を上昇させられるかどうかがポイントである。しかし、こんな配慮をせずゲートドライバーで急速OFFしていた場合でも「条件によってはIGBT2が破壊されなかった」のであるから、安全領域はすぐ手の届くところにあるはずだ。

 逆回復時間にはランクがあるが、順回復時間に関してはショットキーバリアダイオード以外は似たりよったりらしい。順回復時間の速いものを探してダイオードの選択肢が更に狭まる事態は気にしなくて良いが、パーツ性能に頼って何とかすることもまた出来ない。
 理論ではなく現実の回生型回路は完全なサージフリーではないが、何とか折り合いを付けた設計である。かなり苦労している。コイル電流をONにしっ放しの回路に比較すると、OFF機能を与えるのは桁違いに大変だ。しかし、自由に電流を切れる回路を手に出来るかどうかは、将来の発展性を決定的に左右する。ここが我慢のしどころだ。

 以上は 1/35 ストームタイガー開発当時に記述した部分が多いのだが、実は順回復時間待ちはそれほど問題ではないことが判明した。
 問題となったのは dv/dt と I2t で、順回復など気にせず dv/dt が許す限り高速にスイッチングすべきである。スイッチングが遅いとスイッチングロスが大きくなる。コイルガンではストロボ回路よりも大きな I2t が発生し、スイッチング素子が簡単に破壊される。ターンオフを行うタイプのコイルガンは、オシロ無しでは調整不可能。

 

回路の実装

 1/35 ストームタイガーで製作した回路は、かなり変更が加わった。順回復時間ではなく I2t が総本山だったのだ。

 IGBTは一般にゲート電圧の許容範囲がFETに比べると狭い。大電流を扱うため性能をフルに発揮させようとすると、ゲート電圧を厳密に管理したくなる。
 小型でありながら大電流が扱えるストロボ用を探したところ、東芝のGT8G121を入手出来た。しかしゲート電圧4〜6Vで使う必要があり、5V近辺に安定化した電源を用意した。

 これが全体回路図である。ハイサイドのIGBT1は光スイッチングを行う。ローサイドのIGBT2は有線でゲートを駆動する。2カ所のIGBTが両方ともONにならねばコイルに通電されない。だから、電磁ノイズと赤外線ノイズの両方に対抗可能である。電磁ノイズにはハイサイドが反応せず、赤外線ノイズにはローサイドが反応しない。すると、どちらが来ても暴発しない。

 D3とD4は保護用、D5は整流用。いずれも小容量でOK。大電流に耐えねばならないのはD1とD2だけである。
 C2は、IGBT1のゲートを駆動する回路の電源。実際の回路を組み立ててゲート電圧がキープされる容量を取り付ける。

 面倒なハイサイドのゲートドライブを可能な限り単純な回路で実現するための手抜きにより、半端な電圧で不用意にONとなる可能性がある。それでも問題無いように設計してある。

 IGBT1が確実にOFFとなったままであれば、R1は不用。IGBT2だけを先行ONにすればR1の代用となる。しかし実際は一瞬ONになる可能性があるため、射撃しない時はIGBT2をOFF固定とし信頼性を確保したい。
 R1として以前は1MΩを使っていたが、大き過ぎてうまく働かないことがある。4.7Kあるいは5.1KΩを使うのが適切と思われる。

 IGBT2がしっかりOFFであれば、IGBT1が不安定でもコイルは通電しない。この状態ではC2のローサイドはGNDであり、D5による電圧降下を経て約5Vでチャージされる。これで、ハイサイドスイッチング用の電源を確保。6.4Vという数値にこだわるのではなく、ハイサイドのコンデンサーに5Vが溜まるように電圧を調整する。
 ハイサイドのスイッチング指令は光ファイバーで送り込むため、以降は電位を気にする必要が無い。

 メインコイルが通電するとC2の電位は上昇し、D5が逆流を防止する。以降はハイサイド回路の動作はコンデンサー頼りとなる。数百μ秒が経過したところで、2つのIGBTをOFFにする。D1とD2が導通し、メインコイルの電流はC1に回収される。コイル電流が消えるとC2の電位が落ち、再び6.4V電源からスイッチング動力がチャージされる。

 ハイサイドの光スイッチイングは光ファイバーを介して行う。

 IGBTを手抜きせず扱おうとすると若干厄介である。基本的にはFETと同じなのだが、FETに比べるとゲート電圧の許容範囲が非常に狭い。だからこそわざわざ別途で安定化された電源供給基板を用意せねばならなかった。ローサイドをPICで直接駆動するためには、PICの電源もある程度安定化されていなければならない。
 最初の増幅用トランジスターが問題で、ハイサイドの光増幅用は601Aには吸い出し能力が無い。OFF時の性能を確保するためエミッター・ベース間耐圧が5Vと低いC1623を使用。

 

ゲートドライバーの組み立て

 エアガンの6ミリBB弾とほぼ同じ空間にパーツを詰め込むゲートドライバーの組み立ては極めて大変である。そのノウハウを示す。

 まず、2つのFETを頭側のドレイン端子で合体させる。両者を密着させると後のパーツを取り付ける際にかなりの無理をせねばならない。あえて2ミリほど隙間を空けておくのがキモ。ここで取り付けたジャンパー線はパーツを持つ時にも役立つ。
 別途で10μFのチップ積層セラコンに5.5Vのツェナダイオードを取り付ける。写真の向きでないといけない。逆だと後のハンダ付けで困る。

 ジャンパー線を使って2つのFETのゲート端子を接続する。中央の尻側ドレイン端子は切り取っておく。また、下側のJ186はゲートとソースの間に1KΩのチップ抵抗を取り付ける。
 テープで仮止めしてからハンダゴテを使う。

 チップ抵抗は足の間隔に合っていると付け易い。1/8ワット品が最適なのだが、自分の場合1KΩでは見つけられなかったので976Ωという半端品を使っている。

 ツェナ付き10μFを取り付ける。+側がJ186のソースおよびチップ抵抗としっかりハンダ付けされたことを携帯顕微鏡で確認する。
 ツェナと10μFを合体させた時の向きが決定的に重要。

 一段落する毎に、フラックス除去液でせっせと掃除しながら作業を進める。

 増幅用トランジスターの位置を決める。写真では裏返し状態。
 ハイサイドの光ゲートドライバーを組む場合はC1623、ローサイドのゲートドライバーを組む場合はC2412Kを使う。

 まずはFETのゲートにトランジスターのドレインをハンダ付けし、続いてエミッターをGND電極にハンダ付けする。

 光ゲートドライバーではTPS601Aを取り付けて完成。

 

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