ハイエアーの科学

 インラインの技術的な解説文献は、極めて少ない。R系統に関しても少ない。それでも、Rの飛び方に関するノウハウは、あちこちで書かれたり話されたりしている。
 でも、どうすれば良いかは語られても、なぜそうするのが良いのかは語られない。ここでは、どうすれば高いエアーが出せるのかを科学的に分析し、根拠を示した上でノウハウを語ってみようと思う。

 ここで説明するRとは、パークのストリートセクションに設置されているクォーターやファンボックスなどであり、ハーフパイプは対象としていません。
 理屈が机上の空論に終わらないためには、自分で実践して確かめないといけないんだけど、ハーフパイプはそこまでうまく飛べないので・・・
 ハーフパイプのうんちくに関しては、ストリートセクションのRに比べればまだ結構あちこちで語られているので、バートライダーのホームページを漁ってみて下さい。

 ここでは、クォーターからドロップインして平地を助走し、ファンボックスを飛ぶという一般的なケースを解析してみる。
 ハイエアーとは、(h2-h0) を最大にする行為である。
 誰でもすぐ分かるのは、h0 を小さくすれば良いってことであり、しっかり足をグラブして引き付けたり、ロケットなど上下に小さく体を折りたためる技が有利ということである。しかし基本的に h0 は他と独立した単純なテクニックであり、分析本体には無関係である。そこで、以下では無視する。だから目的は、h2 を最大にすることとなる。

記号 意味
v1 ドロップイン時の重心の速度
v2 エアー頂点での重心の水平速度
h0 エアー頂点での重心と足先の高度差
h1 ドロップイン時の重心の高度
h2 エアー頂点での重心の高度

 右端のクォーターからドロップインしたスケーターは、クォーターのR面を漕いで加速し、中間の平地をスケーティングして加速し、左端のファンボックスのR面を漕いで加速し、空中に弾道を描く。

数多くの要素を持つこのような現象を、個々の現象に分割すると非常に複雑になってしまう。
 そのような場合に強力な武器となるのが、物理法則の基本中の基本、エネルギー保存則である。まさか知らないってことはないだろうし、もし知らなければ以降の説明に付いて来るのは不可能なので、敢えて説明はしない。
 初期状態としてスタート台のクォーターからドロップインする瞬間(右)、最終状態としてファンボックスのエアーの頂点(左)を取り上げて比較する。スケーターの位置とはスケーターの重心位置(腰の付近)であって、足先ではないことに注意。
 両者のエネルギーを比較してみよう。

ドロップインの瞬間
 スケーターの位置エネルギー (h1 に比例)スケーターの運動エネルギー (v1 の2乗に比例)

エアーの頂点
 スケーターの位置エネルギー (h2 に比例)スケーターの運動エネルギー (v2 の2乗に比例)

ドロップインからエアーの間に追加されたエネルギー
 スケーターの投入エネルギースケートの走行抵抗ロス空気抵抗ロス

 初期状態とエアー頂点状態で、エネルギーは保存されるから、
 ドロップイン時のエネルギードロップインからエアー頂点までに追加されたエネルギーエアー頂点のエネルギー
となる。

エネルギー収支決算
ドロップイン時の位置エネルギー エアー頂点の位置エネルギー
ドロップイン時の運動エネルギー エアー頂点の運動エネルギー
スケーターの投入エネルギー スケートの走行抵抗ロス
空気抵抗ロス

 このように整理出来る。収支決算の左右の欄のエネルギー合計が等しい。イメージ的には、左が使えるエネルギーで、右が消費されたエネルギーって感じになるだろうか。
 目的である h2 の最大化とは、エアー頂点の位置エネルギーの最大化と同じ意味である。それにはそうすれば良いか、もう一度エネルギー収支決算を見てみよう。左の欄の項目は大きいほど良く、右の欄の黄色以外の項目は小さいほど良い。

 物事には本質的なものと副次的なものがある。
 ドロップイン時の位置エネルギーは、スタートクォーターの高さが与件だとすれば変更余地は少ない。テクニックで少しだけ変えられるが本質的条件ではない。
 ドロップイン時の運動エネルギーも、テクニックとして有効であるが、やはり本質的とは言い難い。
 スケートの走行抵抗ロスは、主としてギアの問題なので、これも本質ではない。
 空気抵抗ロスは滑走姿勢などで変化するが、やっぱり逆風は嫌だなぁ・・・って程度か。

 結局は何が本質かと言うと、
・スケーターの投入エネルギーを大きくする
・エアー頂点の運動エネルギーを小さくする

 という2つになる。運動エネルギーを小さくするとは、速度を小さくすることである。エアーの頂点で高速に前に進んでいるようではいけないのである。高く飛びたいのであれば、エアーの飛距離が出ないことは歓迎である。とは言え、ファンボックスのR面の形状によってエアーの前進速度はかなり決められてしまい、ある程度は与件だと言える。やたら大きく調整することは出来ない。こうして、最後に1つだけ残った。

「ハイエアーの奥義とは、パワーである」

 これが科学的結論というものだ。非力な奴のハイエアーは、あり得ない。高く飛びたいのなら、まずはパワーを付けるべし!

 何か身もフタもない結論だが、副次的とは言え非常に多くの項目が絡んでいる。塵も積もれば山となるの諺通り、テクニックも数多くしかも奥が非常に深いし、テクニックでエアーを高く出来る部分も相当に多い。だから、これから関連テクニック等について解説する。
 それらは確かに効果があることばかりだけど、テクニックを知れば得てしてテクニックで高さを出すことに意識が囚われてしまいがちになる。テクニックを考えつつも、パワーあってこそのテクニックなのだということは絶対に忘れてはならない。
 自分は高く飛ぶコツを誰かに聞かれたとき、ちゃんとパワーが出ているかファンボックスへの突入速度は充分か・・・をまず見る。へろへろ助走していたりすると、「もっと速度を出せ」とだけ言って、テクニック的な話は何もしないことにしている。

 スケーターの投入エネルギーという項目は、更に分解可能だ。
・スタートクォーターのR面に投入したエネルギー
・助走スケーティングで地面に投入したエネルギー
・ファンボックスのR面に投入したエネルギー
 という3つである。スケーティングはスケーターの存在意義、基本中の基本だからおいといて、残る2つのR面にいかに大きなエネルギーを投入するかが問題である。言うまでもないが、この2つのRを漕ぐテクニックこそが最重要テクニックとなる。
 Rでは、スケーターの筋肉が生み出したエネルギーの一部しか有効とならないのである。まあ厳密にはどんな場合でもそうだけど、Rの場合は特に差が出易い(変換効率マイナスさえあり得る)。どれだけの割合が投入エネルギーとして有効になるか。この変換効率を高くする手法を、R漕ぎのテクニックと呼ぶ。収支決算表を書き直してみよう。

エネルギー収支決算 注釈
ドロップイン時の位置エネルギー エアー頂点の位置エネルギー  黄色は最終目的(最大化)
 が重要パワー(最大化)
 が重要テクニック(最大化)
ドロップイン時の運動エネルギー エアー頂点の運動エネルギー
助走で地面に投入したエネルギー スケートの走行抵抗ロス
クォーター漕ぎエネルギー×変換効率 空気抵抗ロス
ファンボックス漕ぎエネルギー×変換効率

 

to the High Air

工事中

戻る